香山リカのTwitterまとめ本。それだけでネタ本かと思ったが、精神科医の方ではなく人形の方。本屋でふと見つけて手にとってしまった。
精神科医の方のTwitterはもっぱら炎上の中心として一部の好事家から人気のあるものだが、こちらのリカちゃんのTwitterは、存在こそ知っていたがじっくり読んだことはなかった。ネタ本だと思って手にとった私だったが、その期待は完全に裏切られた。
リカちゃんは世界一「Twitter での活動を期待されていた人物」かもしれない、そう思わずにはいられない本であった。リカちゃんが最も効果的・魅力的に情報発信を行うために開発されたツール、それがTwitterなのだ。
Twitter は自分がシェアしたいと思った瞬間だけをリアルタイムに共有することができる「選択同期」が特徴のプラットフォームである。これこそがリカちゃんのキャラクターをTwitterが昇華させるのに寄与している。
リカちゃんは常に最高におしゃれで、毎日違うファッションをして様々なところへ出かけている。そしてその模様を毎日Twitterに投稿しているのだ。これを並の女性が同じことをやろうとすると大変だ。相当の努力や資金力が必要であるし、クローゼットがいくら広くても服で入りきらない。
しかしリカちゃんは決してそういった「背景」をTwitter に投稿しない。タイムラインを見る限り、完璧なのだ。生身の女性であれば「影で相当努力しているだろうし痛い」「意識高い」とかと見られるだろうが、リカちゃんにはその心配がない。当然だ。なぜなら「背景が存在しない」からである。だから素直に受け入れることができる。
これはリカちゃんにしかできないことだろうか。いや、そんなことはない。生身の人間には当然背景がある。でも、だからどうしたというのだ。現代日本ではとにかく「空気を読むこと」が重要視されるが、それを重苦しく感じているのは他でもない我々なのだ。
「女子力」という言葉がこれほど流通すること自体が、世の中からそれが失われていることの証拠であろう。もはや日本の女性が「女子力」を必要とするのかは、今後の社会通念の変化によるかもしれないが、リカちゃんは日本女性が女子力を取り戻すきっかけになる可能性を秘めているように感じる。それどころか、我が道のまま毎日のスーパーおしゃれを楽しむリカちゃんは、「空気を読まないといけない」という空気を、振り切ってくれる救世主になるだろう。