勝手に更新される毎日

六本木で働くサラリーマンのブログです。やめてくれ、待ってくれと言っているのに、1日1日が勝手に過ぎていきます。

世界の捉え方は四者四様である

f:id:suzuki1001:20171001191640p:plain

喫茶店の席に座っている。
対面には60歳前後のおっさんが座っているのだが、このおっさんがいわゆる「あっちの世界の方」である。
 
「あっちの世界の方」というのは俺が勝手にそう呼んでいるだけなのだが、皆さんも一度は見かけたことがあるのではないか。
往来で誰に対してでもなく宙に向かって延々と話しかける、いきなり演説を始める、駅で駅員さんの真似事をする、など、一見奇異に思える行動をとる人のことである。
尋ねてみたことがないので定かではないが、おそらく彼らには彼らなりの世界の捉え方があって、その範囲内で自分自身のことを正常と思っているが、その世界が周囲とズレまくっているために、周囲からは奇人と見られてしまうのだろう。
 
いま俺の対面に座っているおっさんは、相当レベルの高い「あっちの世界」の人で、右手には聖書を持ち、左手で何かを呼ぶかのように手招きのごとく上下左右に動かしながら、ブツブツ何か言っている状態がかれこれ30分以上続いている。
 
隣に座っていた28歳くらいの女性は、おっさんの奇行に気がつくと顔色を急変させ、店で購入しまだ大半が残っているコーヒーのカップをうち捨て、店を出てしまった。
 
その後空いた席には、何も知らない22歳くらいの男性が座った。
「あぁ、彼もすぐおっさんの非常識的な言動に恐怖を感じ、すぐに店を出ていってしまうのだろうなぁ」と俺は当初高をくくっていた。
しかし、一人目の女性と彼の違いは、彼は耳にイヤホンを装着しおそらく何らかの音楽を聴いていたことで、その音楽であろうものが、彼がおっさんの奇怪な言動に気がつかないように妨げている。
 
つけあがったおっさんは、かばんからギャッツビーのボディーシートを取り出し、まずは聖書をピカピカにした後、自らの顔、脇、腹、足と、次々とまるで入浴かのように拭いた。
その間ももちろんブツブツ何かを言い続けるのは止めずに。
しかしこれでもまだ、推定22歳の男性はおっさんの異常に気がつかない。
それほどまで彼が聴いている音楽が爆音なのか。
それとも、彼もまた「あっちの世界」の人なのだろうか。
わからないが、俺はおっさんが気になって店を出られない。
そして俺の隣に座っている30歳くらいの男性は、おっさんとの距離的におっさんの狂逸に気がついていない訳がないのだが、ひたすら無視を決め込んでいる。
この男性も「あっちの世界」の人なのだろうか、それともここ新宿という土地では、このようなおっさんとの遭遇は日常茶飯事、取るに足らないことなのだろうか。
 
おっさんに対する反応は、四者四様である。