勝手に更新される毎日

六本木で働くサラリーマンのブログです。やめてくれ、待ってくれと言っているのに、1日1日が勝手に過ぎていきます。

不動産屋という、最高に精神を試される空間

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いままでの人生経験上、「心技体」のすべてを試されると思った場面が2つある。

ひとつは麻雀で、もうひとつは不動産屋だ。
 
俺はいままで東京に来てから7回くらい引っ越しを経験したのだが、不動産屋という場所は毎回そうだ。
訪れる者の精神を試験してくる。
多くの物件をまわるのに必要な「体力」や、引っ越しするときに気をつけておくべきことに対する「知識(技)」が求められるのはもちろんだが、最も重要なのは「強い心」だと痛感する。
 
 
今回、また引っ越すことを決め、不動産屋へ向かった。
 
ここの不動産屋は、内見に行くのに車を出してくれるそうだ。
いちいち歩いていかなくてもよいのは、俺ももうすぐ34だ、助かる、これで「体(体力)」が求められることはなさそうだ。
 
「技」についてはどうか。
おれは7回も引っ越しをしている、いわば引っ越し界ではベテランである。
過去には
  • 住んでみたら、家全体が携帯電話の圏外だったことに気がついた
  • 引っ越し前日まで全く準備を進めておらず、その日の夜に徹夜で麻雀して朝帰宅したら、引っ越し業者が来ていて怒られた
  • それであわてて全ての荷物を取りあえず段ボール箱に流し込みなんとか引っ越しを終え、「荷解きめんどくせー」と思って1ヶ月くらい放置していたところ、カビまみれのパンが出てきた
といった失敗もしたが、そういったアマチュア引っ越しマンはとうの昔に卒業している。
 
最後に「心」。
これも問題ない、と、最初は高をくくっていた。
上限予算と立地、譲れない条件をはっきりと自分の中に持った上で訪問したからだ。
 
しかし奴ら(不動産屋にいる人たち)は、そんな屈強に鍛え上げられたはずの俺の精神を、巧みに揺さぶってくる。
 
「ご予算はちょっとだけ超えてしまうのですが、こういった物件ならいま空いています」
 
「ちょっと」とは、金額に直すと月々7000円である。
俺は率直に「ちょっとじゃねーじゃん」と思ったが、しかし、部屋の条件は格段に良くなる。
歴然とした差に、事前に熟慮を重ね屈強に鍛え上げてきた俺の精神はもろくも崩壊し、俺はあろうことかその場で考え込んでしまった。
 
1日にジュースをひとつ控えれば5000円高いところに住める。
月に飲み屋に行く回数を1回減らせば、もう5000円高いところに住める。
社食でお昼のおかずを毎日1つ減らせば、もう5000円高いところに住める。
クラウドワークスで1文字0.1円の記事を月に50000文字分書けば、もう5000円高いところに住める。
携帯電話を格安SIMに変えて、新聞を取るのを止めれば、もう5000円高いところに住める。
月の家賃を25000円も上げられるではないか!
いや、でも万が一今の会社を辞めるときのことを考えると、生活水準を上げるのはよしておいたほうがいいだろう。
そもそも本棚の本を全部処分すれば、こんなに広い部屋はいらない。
駅から徒歩5分以内を希望してたけど、7分くらい歩けるか。
であれば、同じ金額でもっと新しい物件も選べるか…。
 
たかだかこれから住む物件を探す作業でしかないのに、生き方や人生に対する考え方まで問うてくるとは、なんということでしょう。
 
などということを、頭脳をフル回転させ考えていると、俺の担当者の右に座っている、店長然とした人が言う。
 
「出せるなら、出したほうがいいですよ。そのほうが後々満足度が高くなってきますから!」
 
あたりまえ~あたりまえ~あたりまえ体操~♪
 
思わず踊りそうになってしまうほど当たり前だが、それはそうだ。
高いものは、うまい。
そして、うまいものを食えば、うれしい。
うーん、どうしたものか…。
当たり前の事実にこれほど悩まされるとは…。
こういった「当たり前のことをさも貴重な知見のように言うことで、優位なポジションをとろうとしてくる」といった巧みな関節技をも、上級不動産屋になると駆使してくる。
 
散々悩んだ挙句、当初の予算内の物件で決めることができた俺の精神は、これまでとは違う強靭さ、しなやかさを持っているのではないかと思う。
今なら麻雀も負けない気がする。