先日、携帯電話会社のショップを訪れた。
前から5Gに契約を変更したいと思っていたものの、めんどくさいしこんなのは締切もないので放置していたところを、職場近くの店舗の前を通りがかった際に思い出し、次の会議までまだ時間に余裕があったのでふらっと立ち寄ったのだ。
(ちなみにどうでもいい情報だが、5Gへの切り替えはオンラインでもできるようなのだが、俺は端末を通信会社からではなく白ロムで購入したので、店舗でないと手続きができないらしい。なんとかしてほしい)
で、入店。
店員「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件でしょうか?」
おれ「4G契約から5G契約に変更したいのですが」
店員「そうですか…今日はもう予約でいっぱいでして、申し訳ございません」
おれ「え?予約?」
店員「そうなんです。今週はほとんど予約で埋まっておりますので、来週あたりでご予約いただくのがよろしいかと…」
おれは「え?まだ火曜だろ?なのに今週埋まってる?この人はカリスマ携帯ショップ店員?」と思ったが、口には出さない。
しかし、急速にめんどくさくなったので
「はー、今そんなことになってるんですね。また来ます」
といって店を出た。
やや衝撃的な出来事だった。
「え?予約?」というセリフに、「何言ってるのこの人」という苛立ちと狼狽えが入り混じった感情がにじみ出るくらいには。
これは俺の偏見なのかもしれないが、携帯電話ショップなんて、ふらっと立ち寄る場所である。
いつ入ってもガラガラで、従って思い立ったときに訪れればよく、決して「よし、この日のこの時間に行こう」なんて、前々から心づもりをしていくような場所では決してない。
「予約制」はそのメリットの方ばかり取り沙汰されることが多いが、実はマイナスな部分も少なくなく、予約を取る前には「いつに行こうかな?この日はこれとこれで忙しいし…」とか、予約を取った後にも「あっ、あしたは携帯ショップに予約を入れている日だった。忘れずに行かないと」などと、ことあるごとにこのことを念頭に置かねばならない。
よほど必要性が高い案件や、意欲的に取り組みたいことであればいいのだが、たかが携帯電話契約のことで脳の一定の容量を占拠させたくないのだ。
しかも俺が訪問した店舗は、東京でもトップクラスの繁華街に位置していて、キャパシティ的には相当大きな店舗だったはず。
それなのに、予約は5日先までいっぱいだという。
これも経費削減、人手不足ということなのだろうか。
携帯ショップにふらっと入れる時代は、もはや終わってしまったようだ。
■
翌日、おれは銀行を訪れた。
銀行こそ携帯電話ショップを上回り、予約などせずふらっと立ち寄りたい場所ナンバーワンである。
俺の頭にはきのうの出来事が少しかすめたが、「さすが大丈夫だろう。銀行に行く予約を取る奴など存在するわけがない」と、疑念を振り切って入店。
しかしここでも、
案内役の人「今日はもう予約でいっぱいでして、申し訳ございません」
おれ「え?予約?」
店員「今週は金曜はわずかに空いておりますが、それ以外は予約で埋まっておりますので、来週あたりでご予約いただくのがよろしいかと…」
おれ(銀行はいつからこんな人気スポットになってしまったのだろうか…)
こうして2日連続で、予約を取っていないことを理由に退店を余儀なくされた。
■
実店舗ではなくインターネット経由での商品販売や顧客対応が普及し始めた頃、古くからある旧来型の企業は、店舗での対面接客を売りにしていた。
多少、価格が割高であっても。
しかし、昨今の人手不足によって、接客の処理速度は低減、予約が必須になったり待ち時間が長くなったりで、対面と非対面の利便性は逆転してしまった。
もはや、「不便で高い」お荷物にまで成り下がってしまっているように思える。
そんな店舗に2日連続で入ってしまった。
実際、俺が携帯電話ショップや銀行で受けたかったサービスは、偶々なぜかオンラインでは対応できないことだったが、そんなものがある時点でもうちょっと勘弁してほしいのであって、これを機にネット銀行と格安キャリアへの乗り換えを本格的に考えようと思った。