勝手に更新される毎日

六本木で働くサラリーマンのブログです。やめてくれ、待ってくれと言っているのに、1日1日が勝手に過ぎていきます。

俺のフラット化と現実離れ

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『フラット化する社会』という著作が昔ベストセラーになった。
10年以上前に発表されたこの本は、インターネットによって情報が物理的な距離の障壁を越え、あらゆる産業がグローバル化、フラット化する、と、まさに今の世界の状況を予見した名著だと思うが、俺は読んでいないので、おそらくそんな内容だったんだろうと推測する。
 
発売当時俺は本のタイトルと帯だけを見て、「あーなるほどねー先見の明とはこういうことを言うんだなあ。俺にもそれがあれば、時代に先回りして銭儲けができるのに」と思ったものの、本の物理的な厚みと、労働がどうした経済がどうしただの、表紙から漂う内容の意識の高さを敬遠して、手に取ることはなかった。
しかし最近になって、10年遅れでやっと俺にも、「あーたしかにフラット化やね世界は」と肚の底から思えるような感覚が何度もあり、フラット化前線の到来を身をもって体感している。
これぞ先見性のなさ。
 
 
最近頻繁に「若者の○○離れ」が話題に取り上げられている。
○○には、テレビや酒、車、旅行、恋愛、ガム、ギャンブル、お茶など様々なものが当てはまり、この手の話題があがるたびに「近頃の若者はどうなっとるんだ!?」と嘆く人が現れる。
俺はそういった言説に対してどう思っているかと言うと、基本的には「そらそやろ。当然そうなるやろ」と思っている。
「若者」というには俺は歳を取りすぎてはいるが、自分の体験としてそう思うのだ。
 
つまり、実際に俺もいろんな○○から離れまくっており、その原因がインターネットやバーチャルリアリティの発達による自分の欲望の低下にあることを、実感しているからである。
 
いろんなものの発達によって、我々はいつでも、
遠い国の美しい風景を目の当たりにすることができるし
10年に1人レベルの高校球児を育成することができるし
レアルマドリードと対戦することもできれば、レアルマドリードになることもできるし
金メダリストにもなれるし
悪い奴から宇宙を救うヒーローになることもできるし
超いい女とセックスできるし
富士山の頂上まで行くことができるし
美少女な戦国武将を育てて野球で天下統一することができるし
家にいながらなんだってできるのである。
 
そんなものだから、趣味がなんだとか夢がなんだとか、あの人がうらやましいとか、翻って俺の今置かれたこの悲惨な状況は何だ、とも思わなくなる。
だって俺は万能だから、非現実の中でだけは。
そして陰にも陽にも感情の振れ幅が小さくなり、「フラット」になってくるのだ。
先進国と発展途上国の経済とか技術がフラットになってくるとかそういう難しいことはよくわからないが、俺の「フラット化」はここにある。
 
こういう状況に対して、「それは現実から逃亡だ」と非難する人もいるが、逃亡できているうちは逃亡していていいと思うし、むしろ今後の技術発展は、さらに逃亡の幅を広げ、より現実に近い非現実を提供する方向に進むだろうから、みんなばんばんフラットになっていって、何も思わぬ人で世界は埋め尽くされるようになるのであろう。