「世界の盗塁王」と称された福本豊が、国民栄誉賞授与の打診を断った理由を尋ねられ、「立ちションベンもできんようになる」と答えた、という逸話がある。
けだし名言である。
打診がされたのは中曽根内閣の時代、1983年のことだが、今でもこの台詞の重み、正当性は、色褪せるどころか、40年の時を経てむしろ高まっていると感じる。
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先日、神奈川県の黒岩知事のスキャンダルが週刊誌に掲載された。
内容をここで詳しく述べることはしないが、11年間にわたって不倫関係にあった女性の存在と、その女性に対して
「本番前のホンバン?バッカァ~!!生放送前のナマだよ~!!ニュルニュル~~~。ビチョォッ~~~~」
とか
「A子の料理ってどんなかな?アワビにバナナをさしたやつとか、桃にキュウリをさしたやつとか・・・(とにかくなんでもさす!)そんなチョー下品なメニューしか想像できないよ~ん」
といった文言のメールを送っていたことなどが報じられた。
私が黒岩知事の立場で、「もし、ひとつだけ、過去にもどって自分にアドバイスできるとしたら、いつにしますか?」と聞かれれば、間違いなくこのメールの送信ボタンを押す直前を選んで過去の自分をぶん殴るだろうが、それほどの黒歴史を暴かれてもなお黒岩知事は、明日投開票の知事選を辞退せず、引き続き知事であり続けることを目指している。
かたや、「立ちションベンすらできなくなる」という理由で国民栄誉賞を辞退、一方で、ゲロを吐きそうになるほどの激ヤバ黒歴史を晒されても神奈川県知事でありたい。
同じ人間、同じおっさんであっても、ここまで正反対の選択をするものであろうか、人間の思考の奥深さには驚かされるばかりだが、そうも感心してばかりもいられない。
黒岩知事にとっては、選挙直前でのこの報道は致命的すぎる。
さすがにもう再選の可能性はなくなってしまっただろう。
と思っていたらなんと、ここまでの超弩級の醜聞があってもなお、黒岩知事の再選は固いらしい。
報道によると、「他に選択肢がない」という声が多いのだとか。
どんな県やねん。
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ところで俺は東京都民であり今回の選挙には関係がないので、各候補がどんな公約を打ち出しているのか全く知らなかったが、このスキャンダルをきっかけに調べてみようと思った。
一部を抜粋する。
原油高・物価高もあるし、生活に対する不安もあるし、ウクライナの現状を見て、安全保障面の不安もあります。どうやって解決するかといった時に、デジタルの力が大きな支えになるんですよというメッセージをお届けしたいと思っています。
不安を解決するのもデジタル。
メッセージが流出して不安になるのもデジタル。
まさにデジタルの力を思い知らされる、そんな2023年を象徴する知事選になりそうだ。
どの候補にも、最後までがんばってもらいたいと思う。