勝手に更新される毎日

六本木で働くサラリーマンのブログです。やめてくれ、待ってくれと言っているのに、1日1日が勝手に過ぎていきます。

「将来なりたい職業」を酩酊している謎のおっさんで決めてしまった話

2022年に行われてた調査では、小学生の「なりたい職業ランキング」の1位はYouTuberだそうだ。

俺が小学校だった30年ほど前のそれは、おそらく、男子がプロ野球選手で女子がケーキ屋さんとかだったのではないかと思うが、小学生だった俺がなりたいと言ったのは「塾の先生」だったらしい。

だが俺自身はそのことをまったく覚えておらず、最近になって母親から聞かされたのだが、今となっては、なぜそう思ったのか全然わからない。

 

記憶が残る限りでは、俺が「将来、この職業をしてえなぁ」と思ったのは、高校生のころで、その職業はコピーライターだった。

きっかけとなったのは、ある日テレビで見た、もにょもにょと何を言っているのかよくわからないおっさん。

俺は高校まで関西に住んでいたのだが、関西ローカルのいくつかの番組に出ていたそのおっさんは、今では考えられないことだが、明らかに酩酊しているときがあった。

なんでこんなふざけたおっさんがテレビに出ていられるのか。

中島らもという名のそのおっさんが何者なのかを調べているうちに、作家になる前はコピーライターという仕事をしていたこと、そんな仕事がこの世界に存在していて、その業界ではもっと有名な人がたくさんいること、そういう地位になれば、一行の文を書くだけでウン百万といった金がもらえることを知った。

(その一文を書くことがどれだけ大変なのか、は、知らなかったが)

 

大学を卒業してそれなりの規模の広告代理店に入社したが、配属先が決められるのは入社した後でそれまではわからないシステムだった。

俺にとってこれは最悪で、なぜなら、クリエイティブ部門に配属されれば俺が希望するコピーライターになることができるが、もし仮に営業部門であれば、その瞬間に広告代理店営業マンになることになり、それはあらゆる職業の中で俺が最もなりたくない職業であったからである。

(ちなみに、制作部署を「クリエイティブ部門」と呼んだり、広告制作物を「クリエイティブ」と呼ぶ業界特有の風習も、俺はめちゃめちゃ苦手なのだが、これもきっかけは中島らもの作品にある、「ロックは音楽の一ジャンルではなく、生き様のことをいう」という一文に共感したのがきっかけだった。「クリエイティブ」も同じだと思う)

つまり、「なりたい職業1位」と「なりたくない職業1位」が隣接していたのだ。

入社前にあらかじめ営業局に配属されることがわかっていれば、100%別の会社を選んでいただろうが、クリエイティブ局に配属される可能性を望みに、ギャンブルに加わることにした。

そして俺はそのギャンブルに敗れた。

 

死ぬほどなりたくなかった営業マンになることがわかった瞬間に退社するという選択肢もあったが、「人事異動」という名のニンジンに釣られて何年か働いてしまい、しかし敗者復活戦にも勝つことができず、いろいろあって今は勤め先も変わってテレビプロデューサーなんて仕事をしているのだから、先のことなんて本当にわからないものである。

今になって思うのは、「営業マンをやってよかった」とは思わないが、「コピーライターにならなくてよかった」とは思っている。

無論、これは負け惜しみを存分に含んでいる。