回転寿司やうどん屋の客による迷惑行為の動画が話題だ。
ネットニュースによると、スシローの件は今となっては本人も反省しているようだ。
ただやっている最中は、これが面白い、見た人が笑える行為だと思ってやったのだろう。
俺からしたら、いや、大抵の人がそうだろうが、何が面白いのか全くわからない、流行り言葉でいえば「異次元」の意味不明さなのだが、こういうバカッター騒ぎが後を絶たないことから考えると、この面白さがわからない人の方こそ、現代の若者の感覚からは少しズレているのかもしれない。
もっとも、こんな感覚ならズレていて一向に構わないと、普通の生活を送る上では思うのだが、世の中のあらゆることに首を突っ込んで、独自の言語感覚で斬らなければならないコラムニストとしては、そうはいかない。
まあ俺はコラムニストではないからそんなことはできないし、しなくてもいいのだけど。
■
「回転寿司迷惑行為チャレンジ」でも流行ってるの?と疑ってしまうくらい、雨後の筍のように出てくる迷惑行為動画の数々を見て、まず思い出したのが、いわば「SNS迷惑行為チャレンジの祖」である「おでんツンツン男」のことだった。
あの事件が7年ほど前の祭りであることがわかって時の流れの速さにも驚かされるが、サッカーW杯の喧騒にまぎれてひっそりと「ブレイキングダウン」への出場を発表、そしてその煽りVで、「おでんをツンツンした僕でもセカンドライフがあるから、諦めないでほしいってことを、子供たちに伝えたい」といった内容のことを言っていて、「いやいや、もっと先に伝えるべきことがあるだろ」と笑わせてもらった半年前の出来事すらも懐かしい。
だが実際には、俺が知らなかっただけで、彼はその「もっと先に伝えるべきこと」を、すでに伝えていたようなのだ。
AbemaTVに出演したり
文春の取材を受けていたり
そしてなんと昨年にはYouTubeチャンネルまで開設していたようだ。
AbemaTVでのトークや文春のインタビューで言っていることをざっくりまとめると
- 人を楽しませるのはいいけど、迷惑をかけちゃいけないよ
- いまだにツンツンとか言われるよ
- 家族も失ったよ
- SNSだったら何を言ってもいいってわけじゃないと思うよ
- これからも社会のルールを守りながら人を楽しませていきたいよ
ってことだったが(詳しくは記事を読んでもらいたい)、「もっと踏み込むべきではないか」と俺は思うのだ。
今回のスシローやくら寿司での迷惑行為動画でも、これから彼らにどういった処分が下るかわからないが、通っている学校も名前も特定され、決して消えることのないデジタルタトゥーを全身にびっしりと刻んでしまっているし、今回に限らず、些細な気持ちでSNSに投稿したことで人生を踏み外してしまった人は後を絶たない。
バカッターの出現以降、「デジタルリテラシー」教育の必要性が主張されるようになり、俺もその意見に概ね賛同するが、問題なのは「誰が教えるのか」ではないか。
教える資格がある人の条件として考えられるのは
- SNSをやっている
→ これは当たり前 - それなりにフォロワーがいる
→ フォロワーがいなくて見つからなかったから炎上を免れるような人だと困る - その場のノリで愚かな動画をあげてしまう気持ちと、その恐ろしさを身をもって理解している
→これが最も難しい。「人に迷惑をかけてはいけないよ」などの生ぬるい諭しではもちろん、「逮捕されるよ」「莫大な損害賠償を請求されるよ」などといった説明すら抑止力になっていないのは、おでんツンツン男やそれに続くバイトテロに対して損害賠償が命じられた実績以降もバカッターが後をたたなかったことからも明らかである。実際に損害賠償請求が来て、もしくは日本中が自分の話題で持ち切りでSNSで「140億の損害賠償だな」などといった投稿であふれかえるようになるまで、これから投稿しようとしている動画がどういった未来につながるかを想像できない者に対しては、大変な目を経験した人間による実体験の共有以外の手段がないのではないか。
と考えると、日本にはおでんツンツン男とへずまりゅうの2人しか思い当たらない。
■
急速に変化している最中の現代では、様々なことが過渡期だ。
時代の流れに取り残された上司が「え?これがセクハラになるの?」とわかったところで時すでに遅し、本人的には悪気がない言動によって社内での地位を失った、などといったケースも、人々の価値観が変化している最中でその変化スピードに個人差があるからこそ起こりうる。
バカッターをバカにしている人たちにも、SNSが存在する前の時代に、今だったら一生もののタトゥーになりかねない悪ノリ行為を一切したことがない、と自信を持って言い切れる人は、果たしてどれくらいの割合でいるだろうか。
事態は一刻の猶予も許されない。
未来ある若者による「社会的自殺行為」を止めるためにも、おでんツンツン男とへずまりゅうには、全国の小中高校、あと専門学校と大学、そして企業を行脚して、自らの経験を赤裸々に語る「デジタルリテラシー」授業を行ってほしい。
必修で。